これはブログではない

生物学(主に理論生物学)の論文を書くために読みます

制御ネットワークの構造と遺伝子発現パターンの多様性

Atsushi Mochizuki(2008.1, Journal of Theoretical Biology)[Structure of regulatory networks and diversity of gene expression patterns]

 

理由

こないだ読んだ論文の理論パートの参考文献になってたやつ

 

概要

遺伝子制御ネットワークの複雑性は、細胞の多様性の要因であると考えられてきた。遺伝子発現パターンで特徴化される異なる種類の細胞は、制御ネットワークに基づいた遺伝子活性のダイナミクスを通じて初期胚で産生される。しかしながら、制御ネットワークの構造と遺伝子活性のダイナミクスとの関係はほとんど知られていない。ここでは、新しい「定常状態互換性」の概念を紹介する。これは可能な遺伝子活性の多様性が遺伝子制御ネットワークの構造から決定できるというものである。基本的な前提は非常に単純であり、遺伝子の活性は制御する遺伝子の関数であるということである。よって、制御する遺伝子が唯一であるとき、遺伝子は常に唯一の発現活性を示すはずである。これに基づいて、遺伝子の制御関数を知ることなく、制御関係に関する情報のみを用いて定常状態の最大の可能な多様性を決定した。この考えを応用して、いくつかの一般的な特性が得られた。例えば、制御ネットワークにおける複数のループ構造は遺伝子活性の多様性を増加させるのに必要である。一方で、同じ遺伝子を共有する複数のループは多様性を増加させない。この方法をウニにおける初期発生に原因となる遺伝子制御ネットワークに応用した。定常状態の互換性の概念に基づいて、遺伝子活性の多様性を生み出す原因となる重要な遺伝子のセットが得られた。

 

雑記

この論文、読み終わって一息ついた瞬間にデジャブが来るんだよな。前にも読まなかったっけ?→(2020.8.3)やっぱり読んでた。

ronbun-kaku.hatenablog.com

単層細胞における機械化学的なパターンと最適移動の理論

Daniel Boocock;...; Tsuyoshi Hirashima; and Edouard Hannezo(2020.9, nature physics)[Theory of mechanochemical patterning and optimal migration in cell monolayers]

 

理由

Twitterで流れてきて、面白そうだったので

 

概要

選択的な細胞移動は、非平衡物理と細胞生物学の充実した分野であり、ガラスダイナミクスやパターン形成、活発な乱気流のような現象を解明している。しかしながら、機械的かつ化学的なシグナリングがどのように細胞レベルに統合されて、このよな選択的なふるまいを起こすのかは明らかではない。ここでは、高く保存されている現象である、細胞外シグナル調節性キナーゼ(ERK)活性とその密度の時空間的な波の現象に注目することで、この問題に取り組む。この現象は、選択的な細胞移動や創傷治癒の間に生体外と生体内の両方で現れる。最初に、機械的かつ工学的摂動実験によって裏付けられた生物物理理論によって、活性細胞張力と機械受容的なERK経路との機械化学的な共役によって、パターンが定量的に説明されることが分かった。次に、この生物物理メカニズムは、狙った方向への長距離の移動を頑健に誘導できることを示す。そして、自由端に向かう最大移動を誘導する最適な波長と周期を理論的に示す。これは、実験的に観察されるダイナミクスと良く合っている。これにより、時空間的不安定性に生物物理的起源と頑健かつ効率的な長距離移動の設計原理との間を繋ぐ。

 

雑記

文章の構成、論理の流れ、英語の表現、全て参考になる。本文もちゃんと読んだ方が良いかも

 

アフリカツメガエルにおける二次元モルフォゲン勾配:境界形成とリアルタイム伝達反応

T. Kinoshita;...; J.B. Gurdon(2006.10, Developmental Cell)[Two‐dimensional morphogen gradient in Xenopus: Boundary formation and real‐time transduction response]

 

理由

ノーベル賞2012年医学生理学賞

 

概要

モルフォゲン勾配は、胚でのパターン形成に重要な役割を果たす。しかしながら、モルフォゲン勾配における位置情報の解釈はあまり理解されていない。特にアフリカツメガエルの胚のように不透明な胚におけるモルフォゲン勾配を解析するのは難しいので、胚を固定し、分離する必要がある。それにより、リアルタイムで観察する可能性を除去し、3次元行われる事象の解釈がより難しくなる。ここでは、アフリカツメガエル胞胚の動物極由来の2次元の細胞を用意した。これは、通常の胚と同様に同じ割合でアクチビン濃度勾配が形成され、解釈される。この種の2次元細胞標本を用いて、濃度勾配形成と胚における解釈に関する以下の新しい情報を得る。リアルタイムでアクチビンの活性勾配の動的形成を決定する。この勾配は、細胞内空間を介したアクチビンの拡散によって形成され、レセプターやリガンドの内部移行を必要としないことが示された。さらに、遺伝子発現の境界形成は構成の変化や濃度勾配の変化ではなく、この解釈に依存していることが分かった。

 

雑記

なんとなく授業で紹介されてたアクチビンの濃度勾配、ガードンの仕事だったのか

自発的かつCa2+誘導的な神経伝達物質の放出におけるシナプトタグミンの遺伝的解析

Zhiping P Pang;..;Thomas C Südhof(2006.4, EMBO J)[Genetic analysis of synaptotagmin 2 in spontaneous and Ca2+‐triggered neurotransmitter release]

 

理由

ノーベル賞医学生理学賞2013年

 

概要

シナプトタグミン2は、前脳シナプスにおける速い神経伝達物質放出のCa2+センサーであるシナプトタグミン1に似ているが、シナプトタグミン2の機能はほとんど知られていない。ここでは、シナプトタグミン2におけるひとつの、不安定化するアミノ酸置換(I377N)をもつ深刻な失調性マウス系を説明する。Held萼状シナプスの萼において、この変異はCa2+誘導性の放出を遅らせ、減少させるが、高張スクロース誘導的な放出は減少させない。このことから、シナプトタグミン2は前脳シナプスにおける引き起こされた放出のCa2+の誘発を調節することが示唆された。予期しないことに、シナプトタグミン2変異シナプスは自発的放出を急激に増加させることも観察された。シナプトタグミン1欠損の興奮性及び抑制性皮質シナプスも自発的な放出の大幅な増加を示したことから、この効果はシナプトタグミン1と2で共通であることが示された。結果から、活動電位誘導的な放出のCa2+のきっかけと、自発的な放出の制限において、シナプトタグミン1と2の等価な機能は、活性部位でのシナプス小胞の"放出箇所"を制御するシナプトタグミンの一般的な役割と一致することが示唆された。

 

雑記

どうも周りと主張が合わないな、と思った時は「前向きなペシミスト」の部分が出ていると分かった。「基本的に世の中が悪い方に動いていくことはどうやっても変わらないから、悪い方に流れていく中でどうやったら楽しく生きていけるか考えよう」みたいな。なので、世の中を変えたい気持ちにも同調できないし、現状に文句だけ言って思考停止する人にも同調できていない。一番保守的、というかやる気がない人みたいだな

小胞体からゴルジ体へのタンパク質輸送に必要な分子機構

Linda Hicke; Randy Schekman(1990.6, BioEssays)[Molecular machinery required for protein transport from the endoplasmic reticulum to the golgi complex]

 

理由

ノーベル賞医学生理学賞2013年

 

概要

小胞体とゴルジ体間のタンパク質の輸送を担当する細胞機構は、遺伝学と生化学を用いて調査されている。小胞体とご理事との間のタンパク質輸送の調節における小胞の役割は、この過程を欠損させた酵母変異体の特徴化と、最近開発された小胞からゴルジの輸送を測る非細胞的な解析によって確率されてきた。これらの方法によって、細胞内タンパク質輸送に重要ないくつかのタンパク質も同定された。ここでは、いくつかのGTP結合型タンパク質、周辺膜タンパク質、ERからゴルジへの輸送中の統合的な膜タンパク質の特徴化と潜在的な機能も議論する。

 

雑記

「理解する能力」は上がってきたから、「理解してもらう能力」を上げる必要がある気がする。

小胞の出芽と融合のタンパク質機構

James E. Rothman(1996.2, PROTEIN SCIENCE)[The protein machinery of vesicle budding and fusion]

 

理由

ノーベル賞医学生理学賞2013年

 

概要

輸送小胞を出芽し融合する一般的なタンパク質機構は、細胞成長やエンドサイトーシス、ホルモン放出、神経伝達のような多様な過程に重要な細胞内輸送経路の複雑な網を構成するのに利用されている。細胞生物学のこれらの多くの側面の正確な分子メカニズムを理解することが難しい状況は、タンパク質構造と化学的な一連の問題の中で改善されてきた。

 

印象的な図

Fig5. SNARE仮説の小胞の出芽と融合

 

雑記

SNARE、大学の細胞生物の授業でめっちゃ覚えさせられたな。先生が話すだけではなく、自分で授業内容を文と絵でまとめさせる授業だった。面倒だったが、未だに覚えてるってことは有用だったのかも

 

 

 

ラットの海馬錐体細胞の配置と水中迷路中の空間学習

Stig A. Hollup; May‐Britt Moser Edvard I. Moser(2001.12, European Journal of Neuroscience)[Place fields of rat hippocampal pyramidal cells and spatial learning in the watermaze]

 

理由

ノーベル賞 2014年医学生理学賞

 

概要

空間学習中の海馬ニューロンにおける位置関係の活性を学習する背景を与えるため、円形の水中迷路での海馬位置細胞の活性を類似した陸上のタスクと比較した。複雑なスパイク細胞は両方の状況において相関する頑健な位置を持っており、有意な割合の細胞が

同じ位置での場所を持っていた。しかしながら、空間内の発火は水中条件においてわずかに高かった。発火の増加は開放した水中タスクでも観察された。プラットフォームの位置が異なる場合やプラットフォームが全くない場合にはこの増加は見られなかった。次に、この位置は遊泳中に強い方向性の修正を受けた。円形のタスクでは、動物がプラットフォームを見つける訓練を受けるかに関わらず、方向感受性が現れた。開放水中迷路でも方向性の修正単位はあったが、その数は通路のものより少なかった。これらの観察から、運動感覚や平衡感覚の入力が異なるにも関わらず、水中迷路での位置は陸上と同じ因子によって制御されていることが示唆された。発火頻度と方向制御の違いは、ラットが動く培地ではなく、タスクの幾何的または認知的構造に依存する可能性がある。

 

雑記

これまでは論文を「理解」することばっかり意識してたから、自分の論文がうまくかけないのかもしれない。「納得」できるかを意識して他の論文を読んだ方がいいかも