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選択的細胞移動の多細胞物流

Yamao, Masataka;...;Ishii, Shin(2011.12)[Multi-Cellular Logistics of Collective Cell Migration]

 

理由

本田先生シリーズ2

 

概要

発生の間、器官や神経ネットワークなどの生物学的ネットワークの形成は、細胞移動に基づく多細胞輸送現象によって制御されている。満員電車で乗客が他人に押されるように、多細胞系では、混雑した空間では細胞移動は他の細胞との物理的相互作用によって制限されている。個々の細胞の動きは本質的には確率的で、おそらくランダムウォークとして考えられるだろう。しかしながら、このウォークはノイズのある環境で起こる、なぜなら細胞はランダムに動く隣接細胞と相互作用するからである。このランダムさと複雑さにも関わらず、発生は遺伝的(もしくは後成的)設計図に従って高度に調節され、正確に制御されている。個々の細胞移動は長く研究されてきたが、正確に調整された発生過程中の多細胞輸送に確率が影響する仕組みはほとんどわかっていない。多細胞移動に潜む一般原理を探すため、神経堤細胞の移動に注目した。この細胞は選択的に移動し、流れを形成する。多細胞の移動の力学モデルを導入し、このモデル基づくシミュレーションによって、移動モードは移動細胞と非移動細胞からのノイズの相対的な強さに依存することが分かった。移動細胞から強いノイズと周辺細胞から弱いノイズを受けると"選択的移動"を引き起こし、一方、非移動細胞から強いノイズを受けると"分散的移動"が起こる。さらに、理論的解析によって、移動細胞は長距離であっても互いに引き合うことが明らかになった。この効果的な相互作用は移動細胞と非移動細胞の確率性に依存する。これらの発見に基づいて、多細胞系での選択的な移動を行うために1細胞レベルの確率的ふるまいが効果的かつ正確に働くことを提案する。

 

印象的な図

Fig2. 多細胞移動のシミュレーション

 

雑記

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