これはブログではない

生物学(主に理論生物学)の論文を書くために読みます

形態形成の化学的基盤

A. M. Turing(1952.8, Philosophical Transactions of the Royal Society of London. Series B, Biological Sciences)[The Chemical Basis of Morphogenesis]

 

理由

 そういえばTuring先生の論文読んでなかったので

 

概要

 モルフォゲンと呼ばれる化学物質は、反応と共に組織間を拡散し、形態形成の主な現象に充分必要であることが示されている。元来、このような系はかなり均質的であるが、ランダム分布によって引き起こされる均質的な平衡の不安定性によって、パタンや構造を後に発生しうる。このような反応拡散系は、単離した環細胞の場合に詳細に考えられており、これは数学的には便利であるが、生物学的には稀な例である。研究は不安定性の起点に主に焦点を当てている。これが起こりうる6つの必須で異なる形態があることがわかった。最も興味深い形態では、リング上に定常波が見られる。例えば、これはヒドラの触手や螺旋葉を説明する可能性があると考えられる。球面上の反応拡散系も考慮する。このような系は原腸形成を説明すると思われる。2次元における他の反応系はまだらを連想させるパターンを生じる。2次元における定常波は葉序の現象を説明する可能性があることも示された。
この論文の目的は、受精卵の遺伝子が最終的な生物の解剖学的構造を決定しうるメカニズムを議論することである。この理論は新しい仮説を作るわけではなく、ただ特定の良く知られた物理法則が事実の多くを説明するのに十分であることを示すだけである。この論文を充分理解するには、数学と、生物学の一部、そして初級化学の知識が必要である。読み手はこれらの学問の専門家ではないと考えられるので、教科書に見られる基礎的な事実を多く説明するが、それを省略すると、この論文は読みづらくなる。

 

雑記

ヒドラの触手も葉序パタンも球面上の反応拡散も、うちの研究室でやってるやつなので、この論文にうちのラボが詰まってると言ってもよさそう