これはブログではない

生物学(主に理論生物学)の論文を書くために読みます

複数の選択を通じるセントラルドグマの起源

Nobuto Takeuchi, Kunihiko Kaneko(2019.7, bioRxiv)[The origin of the central dogma through conflicting multilevel selection]

 

理由

うちのボスの元ボスが興味深いテーマの論文をだしていたので

 

概要

分子生物学セントラルドグマにはゲノムと酵素間に2種類の非対称性がある。ひとつは情報の非対称性であり、情報はゲノムから酵素へと流れるが酵素からゲノムへは流れない。もうひとつは触媒の非対称性であり、酵素は化学的触媒作用を持つがゲノムは持っていない。これらの非対称性はどのように生まれたのだろうか?ここでは、これらの非対称性が分子レベルでの選択と細胞レベルでの選択の間における競争から自発的に生じることを示す。プロトセルの集団で構成されるモデルを構築する。このプロトセルはそれぞれ複製する触媒分子の集団を含んでいる。分子は、触媒としての役割と鋳型としての役割間のトレードオフに直面すると考えられる。このトレードオフは、競合的な複数の選択を生じる。触媒としての役割は、プロトセル間の選択によって好まれるが、一方で鋳型としての役割はプロトセル内の分子の間の選択によって好まれる。この競争が、情報と触媒の対称性の破れを誘発し、分子がゲノムや酵素へと分化してセントラルドグマを構成する。ここでは、フィッシャーの複製値と異なるレベルでの選択の相対的な影響間のポジティブフィードバックによって対称性の破れが生じることを示す。このフィードバックがゲノムと酵素間の労働の分割を起こし、分子レベルでの多様性は細胞レベルでの多様性に対して十分大きく、利他主義の進化を妨げる状況を与える。これらを踏まえると、この結果から、セントラルドグマが競合的な複数の選択の理論的な結果であることを主張する。

 

印象的な図

Fig2. セントラルドグマの進化

 

Discussion

・結果で示したこと、結果と合わせて以下で議論する内容を示す

・化学的物質の特定に寄らずセントラルドグマが成り立つこと

RNA DNAとの関係

・同じ主張をしている先行理論(hypercycle theory)との比較

・先行理論との違い

・先行理論と矛盾しないこと

・血縁選択説との整合性と新しい予測

・ゲノムと酵素の観点における進化と、生物学的な複雑性が生じる可能性

・この理論が生物学的な階層のレベルで伝達の普遍原理であること

 

雑記

そうだよ、こういう理論研究が欲しかったんだよーーこれが理論研究の美しさだよーーってなった。素晴らしい研究だ