これはブログではない

生物学(主に理論生物学)の論文を書くために読みます

1. うつろいゆくもの

西浦廉政(2003.2, 岩波書店)[自己複製と自己崩壊のパターンダイナミクス]

 

理由

理論の勉強

 

概要

グレイスコットモデル

数値結果:島状のスポットが次々と分裂し、領域を埋め尽くした後は消滅と分裂を繰り返す。

問題提起:「分裂」や「消滅」さらに解がどのように「遍歴」するか?

本書では、これらに応えるべく、解の大変形をともなう遷移的ダイナミクスにどのように取り組むのかを述べる。

パターン形成理論の3段階

「オブジェクト」=ある特定の解のクラス。例:空間的に局在化した定常解、周期解あるいはカオス的にふるまう解など

 

1.オブジェクトの発見物語

 様々な解の数値的発見、厳密な構成、そしてそれらの安定性、分岐解析につながる 

 様々なオブジェクトの発見と諸性質の解析。

2.オブジェクト間の弱い相互作用によるダイナミクス

 オブジェクトが複数存在するとき、これらの間の相互作用ダイナミクスを考えよう

 「弱い」相互作用=相互作用をしているときの解の状態がオブジェクトのコピーを重

  ね合わせたものでよく近似されるもの。

 例. 安定な2状態を繋ぐ遷移層(フロント)が複数存在するときの超微速運動、局在パル

  スや渦解が十分離れているときの運動

3.オブジェクト間の強い相互作用によるダイナミクス

  「強い」相互作用=それによりオブジェクトの同一性が失われるもの

  例. フィッツフュー・南雲方程式の進行波パルス解の対消滅

 

スケールの違いを利用する

各段階のダイナミクスを理解するうえで「スケール」の違いをうまく利用することは重要であった。

例. 

1.特異接動法

 第1段階での様々な解を構成する際に用いられる

 物事が急激に変化する境界層や内部遷移層などの界面部分とそれ以外のゆっくり変化

するバルク部分に分け、それらのパッチワークとして解全体を作ろうというもの

2.幾何学的特異接動論

 空間方向を時間軸とみなし、力学系理論を適用する

 「遅い」モードと「速い」モードへの分解が基本

 これらにより構成された解の安定性やパラメーターの変化にともなう分岐を調べる時も、遅い成分が決定的となる

 

第2段階の粒子的描像でパルスダイナミクスを導くときも、パルスの大きさに比べ、パルス間距離やシステムサイズは十分大きいという空間スケールの違いが本質的過程であり、それらの相互作用の非線形項はスペクトルギャップにもとづく「遅い」モードが重要

 

スケールの違いを利用して、各場面での主役のみ取り出せば全体のストーリーは理解できるという見方

 

大域的分岐像の幾何的統合 -個々の軌道から軌道全体の成す幾何学

第3段階の強い相互作用ダイナミクスでは、解の大変形が起こるため解析が難しい

「個々の軌道の詳細を追うのではなく、分岐空間において解の枝全体が成すネットワークが興味あるダイナミクスをどのように駆動しているかを調べる」

不安定な解あるいはアトラクターではないが局所不変な多様体の集まりが遷移的なダイナミクスを駆動していることがわかる

分岐解析ソフトによるネットワーク解明が不可欠になる

 

本書の構成

2章. 拡散の役割を離散的定義から不安定化への寄与まで

3章. 不安定化から生まれたパターンが空間方向にどのように広がっていくか

4章. 弱く相互作用する粒子的パターンのダイナミクス

5 6章. 自己複製と自己崩壊をともなう複雑な時空パターンが「大域分岐」の視点からどのように理解しうるか

 

雑記

まじめにパターン形成の理論について勉強しようと思います