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生物学(主に理論生物学)の論文を書くために読みます

必須な代謝産物の漏出の利点とその結果の多様な種の共生

Jumpei F Yamagishi, Nen Saito, Kunihiko Kaneko(2019.4, arXiv)[The advantage of leakage of essential metabolites and resultant symbiosis of diverse species]

 

理由

金子先生シリーズ

 

概要

微生物集団はかなりの多様性を示す。単一の栄養源が制限されている場合でも系や種の多様性は共存する。代謝物分泌が新しいニッチを作り、このような多様性を促進する。それにもかかわらず、単離状態であっても微生物細胞はしばしば彼らの成長に必須なものも含めた多様な代謝物を分泌しており、なぜ細胞が必須な代謝物を分泌するのかはまだ議論されている。最初に、必須な代謝物を漏出することには利点がありうることを示す。細胞内の化学反応が触媒反応のような多体反応を含んでいるならば、この必須な代謝の有利な漏出は可能であり、実際に"流速制御"と"成長希薄"メカニズムを介した多くの代謝ネットワークに典型的である。"成長希薄"メカニズムは自己触媒反応を伴う合成と成長誘導型希薄のバランスの結果である。直感に反して、供給される栄養源が少ない場合であってもこのメカニズムは機能する。次に、このような細胞がたくさんある時、漏出した化学物質を消費する他の細胞種が存在することが両方の細胞種にとって好都合であり、それらの共存が双方の成長を促進する。この論文の後半では、このような"共生"の変わった形態を解析する。”消費者"の細胞種は"漏出者"細胞種が分泌した代謝物を取り込むという利点を持ち、このような消費は環境に蓄積する代謝物濃度を減らす。この環境変化によって漏出者細胞種はよりお多く分泌ができるようになる。この状況によって、いくつかの細胞種の頻度依存的な共存が起こり、これは広範囲のシミュレーションで支持される。よって微生物生態系における新しい多様性が示された。

 

雑記

「大学に入ると、生物は化学になり、化学は物理になり、物理は数学になり、数学は哲学になる」という。したがって、大学には生物学という学問はもう存在しない。少なくとも我が大学には。