これはブログではない

生物学(主に理論生物学)の論文を書くために読みます

海馬場所細胞における二重相と発火頻度符号化:嗅内メッシュ細胞との関係と理論的重要性

John O'Keefe; Neil Burgess(2005.9, Hippocamous)[Dual phase and rate coding in hippocampal place cells: Theoretical significance and relationship to entorhinal grid cells]

 

理由

2014年ノーベル賞医学生理学賞

 

概要

海馬錐体細胞EEGのθリズムに関係する発火の位相による情報を指定するという仮説の考えやデータをまとめる。発火頻度の多様性は、発火位相によって指定されるものより独立的に情報を指定することが出来るという仮説に特に注目する。錐体細胞膜電位における2つの独立な振動の影響の観点から位相前身効果のありうる説明と、どの発火位相が内部のダイナミクスや外部(環境)の変化を反映するかを議論する。最後に、場所細胞と頭方位細胞の組み合わせにおける経路統合システムの部分としての球内上皮における最近発見された”グリッド細胞”の発火モデルを提案する。

 

雑記

医学生理学だけみようと思ってたのに、CRISPRCasが化学で取ったから一応化学もチラ見しなきゃいけなくなった

インドリンSpiroaminalの枠組みを含むインドールアルカロイドの非対称的全体合成

Takeshi Yamada;...;Satoshi Ōmura(2015.7, Chemistry Europe)[Asymmetric Total Synthesis of Indole Alkaloids Containing an Indoline Spiroaminal Framework]

 

理由

ノーベル賞シリーズ 2015年医学生理学賞(の片方)

 

概要

特異的なSpiroaminal の枠組みを含む、インドールアルカロイド、ネオキサリン、オキサリン、メラグリンAの全体合成が達成された。この方法は、フロインドリンの混雑ベンジル炭素にリバースプレニル基を立体選択的に導入し、特徴のあるインドリンSpiroaminalの枠組みにインドリンの2ポット変換を行い、Eデヒドロヒスチジンを構成するために隣接するイミダゾール部分によって支持されている炭素を除去する。前回の解析を通じてネオキサリンの完全な立体化学を解明した。加えて、ネオキサリン、オキサリン、そしていくつかの合成中間物質の生活性、特に抗感染特性を評価した。

 

雑記

有機合成の論文読むのなんて初めてだ、何言ってるか全然わかんねぇ

LC3-Iの結晶化と初期X線解析

Kenji Sugawara;...;Yoshinori Ohsumic and Fuyuhiko Inagaki(2003.5, Acta Crystallographica Section D BIOLOGICAL CRYSTALLOGRAPHY)[Crystallization and preliminary X-ray analysis of LC3-I]

 

理由

ノーベル賞特集 2016年医学生理学賞 大隅先生

 

概要

Aut7/Apg8はオートファゴソームの中間構造であり、オートファゴソーム形成に必須な役割を果たす。LC3-Iと呼ばれるGly120のC末端が除かれた処理された形を発現し、精製し、2つの結晶体に結晶化した。一つの結晶体はa = 84.39, c = 36.89 Åの単位格子のI41の空間グループに所属している。もう一方はa = 60.48, c = 35.28 Åの単位格子のP41 or P43の空間グループに所属する。後者の形から、完全な回折データは2.1Åの解像度で集められた。

 

雑記

大隅先生は、何かのインタビューで「今の生物学は医学に従属している」と言ってたのが印象的だった

決定された因子によるマウス胚と成体繊維芽細胞培養からの多能性幹細胞の誘導

Kazutoshi Takahashi; Shinya Yamanaka(2006.8, Cell)[Induction of Pluripotent Stem Cells from Mouse Embryonic and Adult Fibroblast Cultures by Defined Factors]

 

理由

ノーベル賞特集やってみましょう

 

概要

分化した細胞は卵細胞への核の移植や胚性幹(ES)細胞との融合によって幹細胞様の状態に再プログラムすることが出来る。この再プログラミングを誘導する因子についてはほとんど知られていない。ここでは、ES細胞培養環境下で4つの因子Oct3/4, Sox2, c-Myc, Klf4を導入することで、マウスの胚や成体の線維芽細胞から多能性幹細胞を誘導することを示す。予想に反して、Nanogは必要ではなかった。これらの細胞はiPS(誘導性多能性幹)細胞と名付けられ、ES細胞の形態や成長特性、ES細胞マーカー遺伝子の発現を示す。ヌードマウスにiPS細胞を皮下移植すると、三胚葉すべてから多様な組織を含む腫瘍が形成された。胚盤胞に注射すると、iPS細胞はマウスの胚発生に影響した。これらの結果から、多能性幹細胞はたった少しの決定された因子の追加による線維芽細胞培養から直接的に生み出されることが示された。

 

雑記

奇しくも(?)この記事を書いてるのは今年のノーベル賞発表の朝です。

一貫しない刺激下でのIL-10駆動型マクロファージ表現型の制御

Yishan Chuang;...;Joshua N. Leonard(2017.2, Innate Immun)[Regulation of the IL-10-driven macrophage phenotype under incoherent stimuli]

 

理由

自分の研究関連

 

概要

マクロファージは遍在する自然免疫細胞であり、異なる表現型に機能的に”分極化する”ことで健康や疾患に重要な役割を果たす。この表現型は大きく、典型的な炎症応答(M1)と免疫抑制と創傷治癒を促進する代替応答(M2)に分けられる。マクロファージは魅力的な治療標的であるが、分極化の理解が不完全であるため臨床的な操作が制限されている。分極化に関連する個々の刺激、経路、遺伝子が同定されている一方で、マクロファージが、複数の多様な刺激を構成する生体内の周辺環境をどのように評価するかはほとんど理解されていない。ここでは、”一貫性のない"刺激、すなわち異なるマクロファージ表現型をそれぞれ促進する刺激の組み合わせを用いて、このような組み合わせの刺激下で免疫抑制的なIL-10駆動型マクロファージ表現型がどのように誘導され、維持され、そして調整されるかを解明する。IL-10誘導性の免疫抑制表現型はおおよそ有力であるが、この表現型を維持する持続的なIL-10シグナリングが必要であった。さらに結果から細胞内タンパク質BCL3はIL-10駆動型表現型の重要なメディエーターであると解釈される。IL-12はIL-10処理したマクロファージの分極化に直接影響はしないが、IFNγは生体内のIL-10駆動型表現型を強化する正のフィードバックループを阻害する。よって、この新しい組み合わせの摂動方法のよって、マクロファージの意思決定と局所免疫ネットワーク機能に関する新しい概念が作られる。

 

印象的な図

Figure6. 複数のスケールのネットワークによる一貫性のない刺激の分析

 

雑記

人と旅行に行っても帰ってから「やっぱり我が家が一番だね」と思う年になってきた

混乱を避ける動的特徴のシミュレーション

Dirk Helbing;...;Tamás Vicsek (2000.9, nature)[Simulating dynamical features of escape panic]

 

理由

これも数理生物で見つけたやつかなぁ

 

概要

選択的な人の行動の最も悲惨な形態の一つは、混乱によって誘導される群衆の押し寄せであり、しばしば人が衝突したり踏みつけられたりして亡くなってしまう。この行動はときどき混雑した建物内で火事のような生命をおびやかす状況に巻き込まれたときに起こり、他の場合では、明らかな原因が無い場合や座席へ急いでいる間に踏みつけが生じることがある。技術者たちはこのような災害の規模を軽減する方法を探しているが、この頻度は大規模なイベントの数やサイズの増加に伴って増加するように思われる。しかし、このような混雑ダイナミクスを予測することができる混乱行動と定量的な理論の体系的な研究は稀である。ここでは、歩行者行動のモデルを用いて、群衆内の非協調的な動きによる混乱と傷害のメカニズムを調べる。シミュレーションによって、危険な群衆圧を防ぐ実用的な方法が提案される。さらに、煙が充満した部屋から逃げる最適な戦略を見つけ、これには個々の行動と選択的な”群れ"の直感の混合が含まれる。

 

雑記

無理だから敢えて言うが、一生安定したいな

二次元の興奮系の波の位相形状が、アメーバ細胞の自己組織的な形態ダイナミクスを支配する

Daisuke Taniguchi;...;Satoshi Sawai(2013.3, PNAS)[Phase geometries of two-dimensional excitable waves govern self-organized morphodynamics of amoeboid cells]

 

理由

これも数理生物で見つけたんだっけか

 

概要

ランダムに動く粘菌も哺乳類の細胞も、ホスファチジルイノシトール(3,4,5)-3リン酸とFアクチンは膜状を波のように伝播し、突出部を押し出す役割をすることが知られている。しかし、今日でも波の幾何とアメーバの形の変化のパターンの関係性は明らかになっていないままである。ここでは、相図解析を用いて、ランダムに移動する細胞性粘菌の形態ダイナミクスが空間的な位相特異点、すなわち回転する波の中心を示す点の数やトポロジー、そして位置によって特徴化されることを示す。細胞の端近くの単離した特異点は回転する突出が引き起こされ、一方で対の特異点は対称な伸長を支持する。既に存在する波の後ろであらためて核形成されるために、これらの特異点は強い位相リセットによって現れる。理論モデルの解析により、系の興奮性がホスファチジルイノシトール(3,4,5)-3リン酸からPI3-キナーゼの活性化への正のフィードバックによって支配されることが示され、これがF-アクチンを必要とすることを実験的に示した。さらに、モデルに膜変形を組み込むことで、競合する波の幾何がアメーバ形態における観察される準周期的な変化の多くを説明する。

 

雑記

家にこもるようになってから、ハンバーガーが贅沢品になった