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生物学(主に理論生物学)の論文を書くために読みます

抑制性受容体を通じたRIFINによる熱帯熱マラリア原虫の免疫回避

Fumiji Saito;...;Hisashi Arase(2017,Nature)[Immune evasion of Plasmodium falciparum by RIFIN via inhibitory receptors]

 

理由

免疫シンポジウムの発表者Hisashi Arase先生の論文を予習

 

概要

 マラリアはヒトの最も深刻な感染性疾患であり、毎年約50万人の死者が出ている。熱帯熱マラリア原虫はマラリアの中で最も致死的な症状を起こす。熱帯熱マラリア原虫に繰り返し曝露された後であっても、マラリアに対する獲得免疫は約に立たないが、熱帯熱マラリア原虫によって用いられる免疫制御メカニズムはほとんど分かっていない。この論文では、熱帯熱マラリア原虫が免疫回避を達成するために免疫抑制性受容体を用いることを示す。RIFINタンパク質は多型の多重遺伝子ファミリーの産物であり、感染した赤血球の表面で発現している寄生ゲノムごとに約150から200の遺伝子を含んでいる。RIFINsは白血球免疫グロブリン様受容体B1(LILRB1)か白血球関連免疫グロブリン様受容体1(LAIR1)のどちらかに結合することを発見した。さらに、重度のマラリア患者から単離した熱帯熱マラリア原虫感染性の赤血球は重度でないマラリア患者の赤血球よりもLILRB1と相互作用しやすかったが、この発見を確かめるためにはより大きなサンプルサイズを用いるさらなる研究が必要である。この結果より、熱帯熱マラリア原虫は免疫抑制性受容体を標的にすることで、宿主の免疫系を回避するために多数のRIFINsを獲得してきたことを示す。

 

雑記

1870年ごろのロシアの医師、小説家であったアントン・チェーホフは「私にとって、医療は正妻であり文学は愛人だ。一方に飽きたら、もう一方と一夜を過ごすのだ」と言葉を遺しているらしい。私もそのような具合で仕事をやっていきたい。