これはブログではない

生物学(主に理論生物学)の論文を書くために読みます

神経炎症と神経因性疼痛の誘発

A. Ellis;...; D. L. H. Bennett(2013.7, British Journal of Anaesthesia)[Neuroinflammation and the generation of neuropathic pain]

 

理由

自分の研究関連

 

概要

炎症は、免疫細胞の補充とメディエーター放出の両方に関与する組織障害に応答する器官による過程である。神経因性疼痛の多様な原因は、持続的な痛みの開始と持続に寄与するかもしれない末梢と中枢神経系の両方における過剰な炎症と関連する。炎症応答の間に放出されるサイトカイン、ケモカイン、水溶性メディエーターのような化学メディエーターは、それらの中枢シナプス標的である侵害受容器を感作、刺激もしくはその両方の効果に望ましくない。これらの変化によって、長期的な持続的な不適応可塑性が促進され、これが神経因性疼痛を起こす。この総説の目的は、神経因性疼痛に注目して中枢神経軸の異なるレベルでの炎症メカニズムの概要を与えることである。活発な炎症応答と、炎症応答がより穏やかになるような痛みを誘導する化学治療に関連する外傷性神経損傷のような神経因性疼痛を比較・対比する。神経因性疼痛における過剰な炎症を標的とすることで、潜在的な治療機会を与える。そして、その機会のいくつかだけでなく、このような方法における臨床的問題も議論する。

 

印象的な図

Fig1. 炎症応答の段階図

 

雑記

春は集中が散りやすい気がする。なぜ?タスクが多すぎる?

T細胞の活性化は、炎症に関連する癌における腫瘍形成

Dan Rauch;...; Lee Ratner(2009.12, BMC Retrovirology)[T-cell activation promotes tumorigenesis in inflammation-associated cancer]

 

理由

自分の研究関連

 

概要

慢性炎症は、幅広い悪性腫瘍に長く関連しており、今は癌の発生のリスク因子として広く受け入れられていおり、さらに造血器腫瘍を含む多様な癌の促進因子として解釈されている。炎症とリンパ腫との関係を調べるのに比類なく適したマウスモデルを示す。これは、活性化T細胞とNK細胞で発現するTax原がん遺伝子が、ミクロな上皮内傷害として始まる慢性炎症を永続させ、炎症性結節、皮下腫瘍、大顆粒リンパ球性白血病に発展する。これらのマウスで生物発光イメージングを用いることで、炎症と腫瘍形成を非侵襲的に調べる能力が拡張された。ここでは、これらのマウスの生物発光誘導が、損傷やT細胞活性化そして化学物質の曝露の結果の炎症に相関することを示した。疾患の結果の炎症の長期的な効果を監視した実験において、リンパ腫の発生が炎症刺激で促進された。最終的に、T細胞受容体(TCR)トランスジェニックTAX-LUC動物におけるT細胞の活性化は、皮下腫瘍のTCR- CD16+ LGL腫瘍の発生を悪化させることを示した。炎症が関連する癌における活性化T細胞と獲得免疫の役割は、広く造血器腫瘍に応用可能である。そして、これらのマウスは、活性化T細胞が生体内でリンパ腫形成を促進する詳細なメカニズムにおいて利用できるだろうことを提案する。

 

雑記

対面予定だった授業がオンラインになってラッキー

Tリンパ球は炎症、新生血管形成そして細胞外マトリックス再構成を制御することで皮膚の瘢痕を弱める

Xinyi Wang;...;Sundeep G. Keswani(2019.10, Advances in Wound Care)[T Lymphocytes Attenuate Dermal Scarring by Regulating Inflammation, Neovascularization, and Extracellular Matrix Remodeling]

 

理由

自分の研究関連

 

概要

目的

組織損傷と治癒には獲得免疫が関与することが知られている一方で、関与するリンパ球の特性と真皮瘢痕化への寄与はまだ不明である。T細胞の不足を復元することで真皮の瘢痕化を弱めるという仮説を立てた。

方法

 

マウスにおける生理学的真皮損傷治癒過程中のTリンパ球の時空間分布とそれらのサブタイプを評価した。さらに、野生型(WT)とリンパ球欠損の深刻な複合型免疫欠損(SCID)のマウス間の瘢痕化の結果を比較した。養子的にリンパ球サブセットを転移することで、相補的な機能獲得変異実験を行い、損傷したSCIDマウスにおける組織治癒へのそれらの貢献を実証した。

結果

CD4+ Tリンパ球は、野生型マウスの初日の真皮損傷中に存在し、30日目まで保持された。SCIDマウスの損傷は、WTマウスと比べて弱い閉鎖と、炎症の増加、新生血管形成の制限と瘢痕の悪化を示した。逆に、BとT混合リンパ球もしくはCD4+リンパ球のどちらか単体をSCIDマウスの転移は、コントロールのSCID損傷より少ない炎症、コラーゲン沈着、そして瘢痕化を持つ穏やかな治癒を起こした。一方で、ヘルパーTリンパ球(CD3+CD4+CD25−)やCD8+ T細胞やB細胞や制御性Tリンパ球 (CD4+CD25+CD127low)を含む他のリンパ球サブセットの転移は、瘢痕を減少しなかった。

革新

リンパ球が損傷治癒を遅らせ、瘢痕を減少させるという発見は新しく、真皮瘢痕をどのように制御するのかに関する新しい概念を与える。

結論

データから、初期段階の真皮損傷治癒における保護効果のある炎症とコラーゲン沈着に対するCD4+T細胞の抑制的役割が支持された。これらのデータから、瘢痕表現型の制御における獲得免疫が解釈される。

 

印象的な図

Figure 5. 損傷治癒に関与するT細胞のタイムライン

 

雑記

昨年一年間の自炊の写真をまとめたら結構いい感じになった

ヒト記憶性T細胞:誘発とすみわけ、恒常性

Donna L. Farber;...; Nicholas P. Restifo(2013.3, Nat Rev Immunol.)[Human memory T cells: generation, compartmentalization and homeostasis]

 

理由

自分の研究関連

 

概要

記憶性T細胞は、各自の生涯の大半で体内に最も豊富にあるリンパ球集団で構成される。しかしながら、記憶性T細胞誘発と機能そして維持に関する理解は主にマウス研究と異なっている。マウス研究では、ヒトに起こる複数の病原体に数十年間晒されるということをとらえることができない。ここでは、複数の粘膜とリンパ組織に常在するサブセットの不均一性と多様な組織居住を含む重要な特性を解明するヒト記憶性T細胞に着目した。さらに、ヒト記憶性T細胞の機能と適応性が空間または時間的すみわけにどのように依存するかを議論する。

 

印象的な図

Figure 3 末梢血と組織における記憶性T細胞の不均一性

Figure 4   時間と空間的な抗原特異的な記憶性T細胞のすみわけ

 

雑記

何を食っても、何を飲んでも、好きなだけ寝ても、なぜか満足感が感じられない今日この頃

中間層熱傷モデルにおける細胞集団と損傷治癒関連遺伝子発現の時間変化

Hui-fang Guo;...;Huzwah Khaza’ai(2020.3,  Biomedical Dermatology)[Temporal changes in the cell population and wound healing-related gene expression in deep partial-thickness burnwound model]

 

理由

自分の研究関連

 

概要

背景

火傷は、熱や電気、化学物質や電離放射線に曝露されることで生じる、皮膚やその他の有機組織上の傷害である。本研究を行い、中間層熱傷のラットにおける細胞集団と損傷治癒関連遺伝子の時間変化を記録する。

方法

温度制御の20mm幅のアルミ先端の加熱装置を用いてSDラットの背側部分で熱傷を誘導した。次に、それぞれ熱傷後3,7,11,14,21日で動物を犠牲にした。損傷皮膚組織の半分を解剖し、ヘマトキシリン・エオジン(HE)染色の中性緩衝ホルマリンで固定した。残り半分は切り離し-20℃のリアルタイムPCR解析に保存した。

結果

脂肪細胞の数は火傷後3日目に最大になり、徐々に減少して火傷後11日目に完全に消失することが分かった。好中球の最大数は火傷後3,14日目に最大になる一方で、筋線維芽細胞の最大数は火傷後11日目になることが分かった。リンパ球の数は全体の治癒過程の間でそんなに変わらなかった。遺伝子発現レベルでは、IL-6,TNF-αそしてiNOSを含む炎炎症関連遺伝子は同じであった。これらは3日から11日まで増加し、その後減少した。VEGF-AとTGF-β1の両方を含む血管新生関連遺伝子は同じ発現パターンを示した。これらはともに、3から14日までわずかに増加し、21日後にゆっくりと減少した。MMP-2, TIMP-2そしてコラーゲン2を含むマトリックスモデリング関連遺伝子は時間と共に同期的に時間変化した。これらは3から14日まで持続的に増加し、その後21日後までわずかに減少した。

結論

本研究から、中間層熱傷における損傷治癒関連遺伝子の細胞集団と発現プロファイルの変化が解明された。ここから、熱傷の将来の研究の細胞またはゲノム基盤が与えられる。

 

印象的な図

Table2. 中間層熱傷の皮膚組織中の異なる細胞種の数の時間変化

 

雑記

仕事がすすまないよう

皮膚外傷に対する免疫応答は、炎症と切除のマウスモデルにおける損傷の病因に依存する

Samantha M.Valvis;...;Vanessa S.Fear(2015.8, Journal of Investigative Dermatology)[The Immune Response to Skin Trauma Is Dependent on the Etiology of Injury in a Mouse Model of Burn and Excision]

 

理由

自分の研究関連

 

概要

皮膚外傷には、切り傷や鈍器損傷そして火傷を含む多くの異なる原因がある。これらの外傷の全ては免疫反応を惹起する。しかしながら、免疫応答は傷害の病因に特異的かどうかは現在不明である。この研究を確立し、同程度の切除と火傷に対する免疫応答が同じかどうかを決定する。直径19mmの切除と直径19mmの全層火傷のマウスモデルを用いて、血清サイトカイン誘導、全身血液リンパ球集団、樹状細胞機能/表現型のレベルで自然免疫応答を調べ、CD4とCD8 T細胞集団の持続的な獲得免疫系を調べた。驚くべきことに、自然免疫系と獲得免疫系は、火傷と切除との間で異なる反応する。急性サイトカイン誘導はより速く、切除傷害のサイトカイン誘導の性質と異なっており、これが全身の単球や好中球量の変化を引き起こす。火傷と切除の免疫特性の違いは、傷害後84日までに特に見られる。これは、損傷の病因が応答における持続的な変化を引き起こすことを示唆している。これは部分的に、異なる皮膚損傷の種類に応答して患者の罹患率や死亡率にある違いの根底にある可能性がある。

 

印象的な図

Fig1. 火傷と切除傷害におけるサイトカイン、ケモカイン、血液の時間変化

 

雑記

研究室が広くなった 

ナイーブT細胞恒常性の決定論モデル・確率モデル

Grant Lythe;...;Carmen Molina‐París(2018.8, Immunological Reviews)[Some deterministic and stochastic mathematical models of naïve T‐cell homeostasis]

 

理由

自分の研究関連

 

概要

ヒトは数十年生きる一方で、マウスは数ヶ月しか生きない。これらの長いタイムスケールの中で、瞬時の事象として死亡と分裂を近似してよいくらい稀にナイーブT細胞は死亡もしくは分裂する。体のT細胞集団はクローン形質に自然に分けられる。このクローン形質は同一の受容体を持つ一連の細胞である。ナイーブCD4+T細胞のように細胞の総数は、常微分方程式数理モデルの適切な始点であるのに十分なほど大きい一方で、クローン形質毎の細胞数は大きくない。ここでは、クローン多様性の維持に関する大量の基本的な数理モデルをまとめる。決定論モデルと同様に、胸腺産生の減少を含む、マウスとヒトの寿命の間の多くの競合するクローン形質におけるナイーブT細胞の全体数を明示的に追跡する確率モデルも議論する。大規模ハイスループットシークエンスによってクローンの多様性を実験的に評価するのには多くの困難があるが、単細胞シークエンスの利用は、体のT細胞の全体数以下の大きさのオーダーの数の細胞数に制限されている。したがって、少量サンプルからの推定に関係する数理的疑問はT細胞のレパートリーの多様性の理解を前進させるのに重要である。いくつかの数理モデルがこの分野でどのように進歩するかに関する結論をまとめる。

 

印象的な図

Fig1. 末梢におけるクローン形質の生存率

 

雑記

今年度を無事に振り返り、来年度の計画を立てた。まぁまぁ良い年だったな