これはブログではない

生物学(主に理論生物学)の論文を書くために読みます

マルチスケールの構造異方性が植物の器官作動を操縦する

David A. Sleboda;…; Reza Sharif-Naeini(2023.2, Current Biology)[Multiscale structural anisotropy steers plant organ actuation]

 

維管束植物における葉の移動は、葉枕と呼ばれるジョイントのような構造で実行される。葉枕の多くの構造的特徴は準細胞スケール、細胞スケール、組織スケールの構成で記述されてきた。しかしながら、植物組織の特徴的な階層構造がどのように葉沈調節性の作動に影響するのかはほとんど理解されていない。

膨圧駆動的な葉沈移動のマルチスケールの構造の影響を調べるために、ここでは組織のマルチスケールの階層スケールでオジギソウの葉沈の形態と解剖図を可視化した。

さらに、解剖状態の増加において実験的に葉沈を膨らませるため、浸透圧の摂動を用いた。ここでは、オジギソウの柔組織における方向性のあるセルロースマイクロ繊維の増加、長方形や錐体の初生膜孔域、わずかに縦方向に収縮した細胞の幾何を観察した。

これらの観察と一致して、単離した葉枕の組織はかなり異方的な膨張を示し、高度な力学的異方性を示す。

 

葉枕の組織化のより高いスケールでの膨張現象も葉沈表皮の存在にも影響した。

この表皮は、葉沈の長軸と垂直に配向する引き延ばされた細胞を示した。

この発見から、複数の階層スケールの組織化にわたる構造の特殊化が、 葉沈の水圧変形を支えることから、マルチスケールの力学が生体内で細胞スケールの膨圧変化が、器官スケールの葉沈へ変換するのに重要であることが示唆される。

 

印象的な図

Graphical abstract

 

雑記

こういうスケール間をつなぐ論文、好きなんだよなぁ

PAR-aPKC系:極性におけるレッスン

Atsushi Suzuki, Shigeo Ohno(2006.3, J Cell Sci)[The PAR-aPKC system: lessons in polarity.]

 

理由

学会で聞いて面白そうだったので

 

概要

10年前、par-1とpar-3は線虫の卵細胞の非対称分裂に必須な6つのpar遺伝子の2つとしてクローン化された。

PAR-1はプロテインキナーゼである一方で、PAR-3はPDZドメインを含む足場タンパク質である。

過去十年の研究から、それらは多様な生物的な文脈において細胞極性に関与するPAR、進化的に保存された-aPKC系の一部であることが示された。

最近の発展から、PAR-aPKC系は、極性の軸に沿った補足的な膜の設立における初期の極性のきっかけを逆転させる分子機構であるという共通原理が説明された。

多くの場合、これはaPKC-PAR-3-PAR-6複合体と逆に局在化しているPAR-1もしくはPAR-2の間に成熟した相反する相互作用によって達成される。

しかしながら、非対称的に局在化しているPAR-aPKC系が発生中の極性に関する他の細胞機構と結合すると機構が、細胞種によって異なることを示す証拠も蓄積している。

 

印象的な図

Fig. 1 PAR-aPKC系が関与する多様な種類の細胞局在

 

雑記

会社員って、ふしぎ。

テンセグリティI. 細胞構造と階層性システム生物学

Donald E. Ingber (2003.4, J Cell Sci)[Tensegrity I. Cell structure and hierarchical systems biology.]

 

理由

学会で聞いて面白そうだったので

 

概要

1993年に、この雑誌コメントは、テンセグリティ構造に基づく細胞構造の単純な力学モデルが、細胞の形や移動、細胞骨格の力学がどのように制御され、同時に細胞がどのように物理的な力を感知、反応するのかを説明するためにどのように役に立つかを記述した(J. Cell Sci.104, 613-627)。

今、細胞のテンセグリティモデルは改良され、細胞構造や生物ネットワーク、10年以上前にできた力学制御の文脈に置かれている。

最近の研究から、細胞によるテンセグリティの利用を支持することや、モデルの数学的定式化が細胞のふるまいの多くの面を予測するる強力な証拠が与えられた。

さらに、テンセグリティ理論の開発や数学項の解釈によって、分子レベルで力学や生化学との間の関係を定義し、生物の複雑性の大きな問題に取り組むことが可能になる。

この二部構成の論文のパートIでは、 分子レベルの細胞のテンセグリティの証拠をまとめ、この建造システムがどのように分子から器官への生物系の階層的組織化の構造的な基盤を与えるのかを記述する。

パートIIでは、これらの構造ネットワークがどのように情報処理ネットワークに影響するのかに注目し、次の課題を示す。

 

印象的な図

Fig.1 テンセグリティ構造

 

雑記

生物やってたのに、全然知らなかったなぁ

炎症の解消における空間的考慮:実験的に調整したエージェントベースモデルを介した白血球相互作用の解明

Bayani A;...; Nelson MR (2020.11, PLoS Comput Biol)[Spatial considerations in the resolution of inflammation: Elucidating leukocyte interactions via an experimentally-calibrated agent-based model.]

 

理由

自分の研究関連

 

概要

多くの一般的な病状(癌や関節痛、慢性閉塞性肺疾患COPDなど)は炎症と関連し、その関連は老化や複数の慢性疾患を有する状態の効果が組み合わさった場合にはより強くなる。炎症反応は細胞種によって異なるが、疾患や治療介入への反応下で、炎症反応には免疫細胞や炎症メディエーターとの間で起こる共有の相互作用がある。これらの根底にある炎症メカニズムの理解は、大量の炎症状態に対する治療の進歩の鍵である。現在、炎症反応の構成メカニズムは炎症損傷の解消を駆動するために能動的に操作されていると考えられている。特に、これらのメカニズムは好中球の炎症促進作用とマクロファージの炎症抑制作用に関連する。この論文では、ハイブリッド数理モデルの集合を記述する。ここでは、炎症メディエーターの空間的拡大を偏微分方程式を介して記述し、免疫細胞(好中球とマクロファージ)をエージェントベースモデリング方法を介してここに記述した。免疫細胞がどのように炎症メディエーターに向かって遊走するかに注意して、健康とCOPD影響下のシナリオにおける細胞の軌道を実験的に観察した結果で調整した細胞の遊走モデルを示す。重要なモデルパラメーターの変化がどのように炎症の終息から慢性的な結果へのスイッチを駆動するかを説明し、好中球遊走の異常が、好中球の化学走性異常は、健康な状態から慢性的な状態に移行させうることを示す。最後に、我々の結果を進行中の新しい治療介入の探索の文脈に反映する。

 

Author summary

炎症は、乾癬や毒素、組織過労のような有害な刺激に対する体の主な防御であるだけでなく、喘息や関節痛、癌を含むかなり幅広い症状の根底にある。炎症反応は、回復を促進して創傷を終息させるカギであり、炎症反応には免疫細胞(特に白血球、好中球、マクロファージ)と炎症メディエーターとの様々な相互作用を含む。免疫細胞は、創傷に反応して血流から集積する。組織に来ると、好中球は侵入者を殺して損傷を回復するために毒素を放出するが、他の免疫細胞(主にマクロファージ)によって注意深く管理されないと、この反応は創傷を回復させる代わりに炎症を増加させうる。ここでは、空間モデルを用いて創傷に対するこれらの相互作用をモデル化し、健康な反応がどのように局所的な炎症を拡大しないようにしているのかを調べる。多くの炎症症状が関連することから、細胞がどのように損傷領域に移動するかに特に注意した。健康な患者と慢性閉塞性肺疾患患者由来の実験的に観察された細胞軌道でモデルを調整した。健康な結果は、効果的な細胞移動と、好中球の炎症性とマクロファージの抗炎症性の効果の繊細なバランスに強く依存することを示す。

 

雑記

自分の投稿前に読めてよかったな

方向性のある1細胞運命マッピングのためのCellRank

Lange, M.;...;Fabian J. T. (2022.1, Nature Methods)[CellRank for directed single-cell fate mapping.]

 

理由

研究会で紹介されてて面白そうだったので

 

概要

計算的軌道推定によって1細胞RNAシークエンシング実験由来の細胞状態ダイナミクスの再構成が可能になった。しかし軌跡推定には生物過程の方向性がわかっている必要があるため、正常な発生における分化している系への応用はかなり制限される。ここでは、その方向が不明な再生やリプログラミングと疾患を含む多様なシナリオにおいて1細胞の運命マッピングのためのCellRank (https://cellrank.org)を示す。この方法は細胞運命決定の緩やかかつ確率的な性質に加えて、速度ベクトルの不確実性を考慮して、軌跡推定の頑健性とRNA速度由来の方向情報を組み合わせる。膵臓発生データに基づいてCellRankは自動的に初期、中期、終期の集団を検出し、運命のポテンシャルを予測し、個々の系譜に沿った連続的な遺伝子発現傾向を可視化した。系譜追跡した細胞リプログラミングデータに適用すると、予測した運命可能性は正しくリプログラミング結果を回復させた。CellRankは既知でない中間細胞状態を含む、損傷後の肺再生中の新しい脱分化軌道も予測し、これは実験的に確認することができた。

 

印象的な図

拡張データFig.1 CellRankアルゴリズム

 

雑記

実験はしたくないけど、解析はやりたいね

統計力学と1細胞生物学の出会い

Teschendorff, A.E., Feinberg, A.P. (2021.4 ,Nat Rev Genet)[Statistical mechanics meets single-cell biology.]

 

理由

参加した研究会で紹介されてて面白そうだったので

 

概要

1細胞オミックスは細胞生物学や細胞性疾患の理解を変えたが、システムレベルの解析と1細胞データの解釈は多くの困難に面している。この展望論文では、統計力学や特にエントロピーや確率過程、臨界現象由来の基礎的な概念が、1細胞データ解析に活かされている影響を記述する。さらに、1細胞システム生物学をより深く理解するために、1細胞データのボトムアップモデリング統計力学的解析パラダイムの必要性を提唱する。

 

印象的な図

Fig. 1 状態多様体統計力学モデリング

 

雑記

自分が考えてることは、他の人も考えているんだなぁ

非平衡の結晶成長のフェーズフィールド結晶シミュレーション

Sai Tang;...;Yaohe Zhou(2014.1, Phys. Rev. E)[Phase-field-crystal simulation of nonequilibrium crystal growth]

 

理由

自分の発表で使いたい資料

 

概要

フェーズフィールド結晶モデルによって、平衡な結晶形や樹状形、球状の結晶形の結晶成長の形の遷移をシミュレーションする。成長形、速度、密度分布の関係を調べる。界面のエネルギー異方性と界面の速度異方性との競合によって、低い結晶成長速度下での拡散律速領域における樹状成長のパターン選択が生じる。密度拡散におけるトラッピング効果は高い結晶成長速度下で形の不安定性を抑制し、球状結晶の異方的成長を引き起こす。最後に、結晶成長の形態相図をフェーズフィールド結晶モデルパラメーターの関数として構築した。

 

印象的な図

Fig.1 異なるψ0とε(成長駆動力と結晶異方性)でシミュレーションした結晶成長の形。

 

雑記

木の椅子に2時間半座るとおしりが痛すぎる