これはブログではない

生物学(主に理論生物学)の論文を書くために読みます

5. 自己複製と自己崩壊

西浦廉政(2003.2, 岩波書店)[自己複製と自己崩壊のパターンダイナミクス]

 

理由

理論の勉強

 

概要

粒子パターン間の強い相互作用を考える。2つの安定な1次元粒子パターンをぶつけると同じ方程式の解であっても反射したり対消滅したりする。この章では散逸系の粒子にパルスにだけみられる特徴的なものとして「自己崩壊パターン」「自己複製パターン」を取り上げる。自己崩壊と自己複製は分岐論的には共通の機構、極限点の階層構造によるものである。

5.1 反射から対消滅

分水嶺

グレイ-スコットモデルの定常パルス解は互いに反発する。これは速度が遅ければパルスの持っている運動エネルギーが小さく、反発力という壁を越えられないという直感に基づく。しかし、パルス速度が速くなると、衝突時には合体し、大変形の後反射する。さらにある速度以上になると対消滅するようになる。反射が対消滅かを制御する不安定解(分水嶺)に注目する。

5.2 自ら壊れる(自己崩壊)

極限点の余韻

フィッツフュー・南雲方程式のパルスにおいて、活性因子の閾値であるaを大きくしていくとパルスの速度が遅くなり、最後は消滅する。これはパルスの速度が遅くなり、抑制因子の生成とそれが活性因子に及ぼす影響が大きくなり、前方に進もうとする活性因子を抑え込んでしまうからである。同じ理由で抑制因子の拡散定数を大きくしていってもパルスの崩壊が起こる。これらの崩壊現象は「極限点の余韻」という分岐論的理由で説明できる。

競輪解

自己崩壊パターンの興味ある例:多重パルス解の崩壊過程

これはn連パルスの極限点が階層的に並び、解がそれらの余韻を感じながら崩壊に至る。

空間周期構造の自己崩壊

グレイ-スコットモデルにおいてコサインの12モードの波形は6山の定常状態になった後定数解へ壊れていく。

5.3 自己複製パターン

有限区間

1山パルス解を初期値に与えたとき、パラメータが極限点分岐の起きる前ならば分裂は起きずパルスは安定であるが、左にあれば自己複製が始まる。有限区間の場合、1山解が不安定化し分裂を始めてもパルス間距離が詰まりすぎると有限回の分裂で止まってしまう。

無限区間

パラメータが分裂点の左にくれば分裂が始まる。分裂は有限で止まらず広がろ続ける。

 

雑記

母親にうちの研究室のプレスリリースを見せて説明したのに、「そんなことより早くワクチン作って」などと言われ、心の天の岩戸に籠った